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本会会員執筆論文の2021年Hachemeister賞受賞について

2021年6月3日

受賞のニュース

Casualty Actuarial Society (CAS)は2021年5月28日、2021年のHachemeister賞を「AGLM: A Hybrid Modeling Method of GLM and Data Science Techniques」 Suguru Fujita, Toyoto Tanaka, Kenji Kondo, Hirokazu Iwasawa 2020 に授与すると発表しました。

本論文は、4名とも日本アクチュアリー会会員である藤田卓、田中豊人、近藤健司、岩沢宏和各氏の共著論文です。この受賞を受け、11月に開催されるCASの年次大会では、同論文の受賞講演が予定されています。

Hachemeister賞とは

Hachemeister賞は、1993年に創設され、ASTIN Bulletin, ASTIN, AFIR Colloquium等で発表や掲載された論文を対象に、北米のアクチュアリーへの影響や実用性に重点を置いて、北米の損保アクチュアリー会CASから、年間で最も優れた論文に対して授与されるものであり、この分野では世界最高峰の賞です。

過去の受賞論文には、Mackモデル、Wang変換など、損保数理の教科書に載っているような手法の論文があり、他にも著名なアクチュアリーが受賞しており、日本人による受賞は史上はじめてのこととなります。

受賞理由

受賞理由は、以下のとおりでした。

  • AGLMは、データサイエンス手法の精度の高さと、GLMの説明力の高さの両方を兼ね備えたアクチュアリーのニーズに対応した手法であること
  • 論文内で、自動車保険の例を使って既存のモデリング手法に対するAGLMの優位である点を定性的・定量的に評価していること
  • 論文を読み興味を持った人のためにRのパッケージも一緒に開発されて、AGLMを簡単に使用できるようになっていること
  • 論文では自動車保険の価格設定の例を示しているが、それだけではなく今後他の損保分野やさらに他の応用にまで及ぶ可能性があること

AGLMの概要

AGLMはよく知られているGLMに①離散化②Oダミー変数③正則化を組み合わせた予測モデリング手法です。

近年のデータサイエンスの発展に伴い、アクチュアリーもデータサイエンスの手法を応用しようとしてきました。しかし、アクチュアリーに求められるのは、予測精度の高さだけではなく、説明力の高さも要求されるため、単純な応用は困難です。

今回の論文では、その困難であった予測精度の高さと説明力の高さの両方を兼ね備えた手法を開発しました。