アクチュアリーという仕事の魅力

リスクマネジメント分野

田口 茂

損害保険会社 理事(シンガポール駐在員)
工学系研究科電子工学専攻

アクチュアリーの専門性とコミュニケーションを掛け合わせ、
保険というビジネスを通じて、世の中に貢献する。

仕事内容

アジア地域の統括会社で
保険事業を展開するグループ会社の経営を管理している

私は現在、市況が好調であるシンガポールに駐在しながら、アジア地域の統括会社でグループ会社の経営を管理しています。アクチュアリーの仕事はテクニカルな内容が多いですが、会社のトップ層や専門知識を持たない方々にわかりやすく説明する必要がある場面も多く、コミュニケーションの重要性を痛感しています。

仕事の魅力

日本のソルベンシー・マージン基準の策定に携われるなど
数学や工学を活用して世の中のためになれること

学生時代に学んだ数学や工学をベースにしながら、保険というビジネスを通じて世の中に貢献できることは大きな魅力です。これまで、損害保険・生命保険・資産運用のERM(エンタープライズ・リスクマネジメント)や経理・経営管理などの仕事に携わってきましたが、どの仕事でもアクチュアリーのバックグラウンドが活かされています。理数系の資格としてユニークな点は、保険業の特性上、経営そのものあるいは経営に近いところで働く機会が多いという点だと思います。

個人的に思い入れのある仕事は、かなり前の話ですが、ソルベンシー・マージン基準の策定に携われたことです。ソルベンシー・マージンとは、「支払余力」という意味です。例えば 大災害や株の大暴落といった通常の予測を超えたリスクが発生したときに、それに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つがソルベンシー・マージン比率です。有識者と議論しながら基準の道筋をつけられたことは思い出に残っています。

また、グローバルに働けることも魅力の1つです。これまでニューヨーク、シンガポールといろいろな国で働いてきましたが、その時には、アクチュアリーのERM資格であるCERA(Chartered Enterprise Risk Actuary)が重宝しています。CERAは国際資格であるため、「CERAです」の一言で自分の強みをアピールでき、海外での人間関係の構築に大変に役立っています。なお、グローバルという意味では、保険契約の国際会計基準の策定に構想の段階から関与できたことも得難い経験でした。

今後の目標

アクチュアリーだからこそできる役割で組織・世の中に貢献する

ERMに限らず、ガバナンス全般において、アクチュアリーが果たすべき役割は大きいと思います。保険会社のガバナンス強化に対する社会要請は強まっていますので、アクチュアリーの一人として貢献していきたいです。

Message

メッセージ

保険業界は、自然災害の激甚化、自動運転等の普及、少子高齢化、医療技術の革新、マーケットの変動の増大など、大きな環境変化の影響を受けています。他方で、AIによる新たなリスクやデータサイエンスによるデジタル化の加速といった影響も少なくありません。そうした状況に対応するには、ますます理系的なセンスが必要になってくると思います。

そうした中、私がこれからのアクチュアリーに必要だと思うことは2つあります。1つは、「専門性とコミュニケーション」の掛け合わせです。これは既にお話しした通りです。もう1つは、日常業務やプロジェクト業務における「マネジメントスキル」です。アクチュアリーが担うのは複雑な業務が多いので、マネジメントの巧拙が組織の生産性やメンバーのワークライフバランスに直結してきます。これら2つを意識すると、所属している組織や世の中におけるアクチュアリーの役割がこれまで以上に大きくなっていくのではと思います。