アクチュアリーという仕事の魅力

損害保険分野

塩島 薫

損害保険会社 再保険部
文学部 歴史文化学科

人とつながって学び、知見を深め、成長し続ける。
アクチュアリーという仕事が、私の世界を広げてくれた。

仕事内容

さまざまなリスクを踏まえ、論理的思考で最適解を見出す。
大切にしているのは、相手の状況に対する理解と共感

現在は損害保険会社で再保険のバイヤーをしています。出再するリスクには、国内の自然災害から火災などの物損リスク、サイバーを含む賠償責任・費用リスクまで、さまざまなものがあります。そうしたリスクごとの性質を踏まえ、元受リスクのエクスポージャー量を把握・計量して、当社にとって最適な再保険プログラムを企画するのとともに、再保険会社と出再における条件を交渉するのが私の役割です。

この仕事は「これまではこうしてきた」という慣習にとらわれず、今日的に見てそれが最適なソリューションであるか否かを判断することが求められます。例えば、以前は自然災害リスクを計量する際、市区郡レベルでの大括りな集計データを使用していました。しかし、近年の水災リスクの高まりを受け、より細かい単位での所在地データを取得したり、建物の脆弱性に関わる築年数や階数データなどにも着目したりすることで、従来よりも精緻な計量を行っています。このように自分の意識や考え方をアップデートしながら、常に論理的思考で解を見出すように心がけています。

再保険会社と相対する私たちの使命は、元受保険会社の代表として所属会社の便益を最大化することですが、便益を追求するのは再保険会社も同様です。ですから、条件交渉などの際に再保険会社の要求の先にはどのような背景があるのかを理解し、相手の立場になって考えることも重要。アクチュアリーには共感する能力も求められると考えています。

仕事の魅力

環境も文化も異なる人との交流が新たな学びの機会に。
自分の世界を広げてくれたアクチュアリーの仕事

私たちは、再保険会社はもとより、ブローカー、モデリング会社など多くの取引先との関係のなかで業務を行っており、取引先は海外にも広がっています。この仕事の魅力の一つは、国や地域も異なる外部の方と文化的な交流も含めて関係を深めることで、新たな知見を得られることだと思っています。また、日々の業務において海外のアクチュアリーと接点を持つ機会もありますので、数理的な議論を通して勉強することもたくさんあります。新しいことを学び、深め、自分の成長を実感できることは、仕事のやりがいにもつながっています。

実は、私は大学までは文系で、このようなキャリアを踏むことになるとは夢にも思っていませんでした。数学が得意とはいえない私でしたが、就職活動の段階で自分と同じ文系出身の先輩アクチュアリーと出会って刺激を受け、新たな可能性を見つけられるようなハードルの高い挑戦を若いうちにしておきたい、と考えるようになりました。 それからは苦手だった数学を猛勉強して試験に合格したわけですが、現在の担当業務においては入社後に配属された商品部やリスク管理部で学んだ火災保険商品やモデリングの知識も大いに役立っています。商品やお客様のことを知り、アクチュアリーを志したことで、自身の新たな道が開け、世界が一気に広がったおかげで現在のポジションにたどり着けたように思います。

今後の目標

専門性を極め、広い視野をもって将来を見据えた提案ができる保険数理のプロフェッショナルをめざす

日本国内における実務上の課題解決を担うだけでなく、世界中から発信される情報にアンテナを張り、広い視野を持って将来を見据えた提案ができる――これからのアクチュアリーにはそんな能力が求められていると認識しています。アクチュアリーが持つ知識は本来万国共通。世界中の保険会社のトップレベルとの共通言語になり得るものだと思いますので、その知識をフルに発揮すれば、あらゆる国・地域の人とつながり、世界中の保険会社の動向などを把握することもできるはずです。

当初の目標は、保険数理のプロフェッショナルとして、プライシング、リザービングなどの個別領域で高度な技術を磨き、数理分析ツールを開発するなど専門性を極めることでした。しかし、組織のリーダーのポジションになった今は、 文系として培った言語能力を駆使しながら、幅広い知識を統合して社内外のステークホルダーと対話していくことも重要なミッションだと考えています。そして、このミッションをクリアするなかで知見やネットワークをさらに広げ、会社の将来を見据えた提案ができる人材に成長していきたいと考えています。

Message

メッセージ

アクチュアリーはニッチな専門職ではありません。保険事業の全体を深く理解している人材としてたくさんの活躍の場が用意されています。そのチャンスをつかむためにも、一緒に試験勉強に取り組む仲間たちと切磋琢磨し、ぜひ同じ目標を持つ多くの人とネットワークを築いていってくれることを期待しています。